工学研究科生物応用化学専攻 牧島央和
今回、私は財団法人交流協会の若手研究者交流事業より助成を受け、台湾?成功大学にて二ヶ月間滞在し、有機リン系化合物のバイオセンシングに用いる蛍光検出デバイスの研究開発を行いました。その締めくくりとして8月13日~14日に同大学で開催された第4回国際環境バイオテクノロジーシンポジウムのオーラルプレゼンテーション部門に参加し、学生発表優秀賞を受賞しました。
私の発表タイトルは「Organophosphorus Hydrolase and EGFP Displayed Arming Yeast for Organophosphorus compounds Sensing System 有機リン加水分解酵素及びEGFPを表層提示したアーミング酵母による有機リン化合物検出」です。本研究では、目的タンパク質の遺伝子とアンカータンパク質の遺伝子を遺伝子工学的な手法を用いて融合することで、目的のタンパク質を酵母の細胞表層に固定化可能な細胞表層工学の技術を用いて、改変型緑色蛍光タンパク質EGFPと有機リン加水分解酵素OPHの両者を酵母Sacchaomyces cerevisiaeの細胞表層上に固定化し、酵母細胞をセンサー素子として用いる有機リン化合物検出バイオセンサの構築を行っています。改変型緑色蛍光タンパク質EGFPは、先日ノーベル化学賞を受賞された下村脩博士によって単離?精製されたGFPの改変型タンパク質であり、生体細胞内における生体内機能分子の相互作用や位置情報、検出などバイオイメージングのツールとして幅広く応用されています。私たちのシステムではpHの変化によって蛍光の強さが変化することを利用し、有機リン化合物の分解に伴うpH変化をEGFPの蛍光強度変化にてモニターすることで有機リン化合物の検出を行います。これは1つの細胞の表層にOPHとEGFPを同時に固定化することで、局所的で微小なpH変化を検出可能であります。これまでの研究において、細胞表層上のEGFPの蛍光強度は十分であり、pH 4.0から7.0の間でpH値に比例して蛍光強度が変化することを確認しています。また、有機リン化合物の分解に伴うEGFPの蛍光強度の経時的変化を、蛍光顕微鏡をもちいて一細胞単位で撮影することに成功しています。
今回の発表が学生発表優秀賞に選ばれたことは大変光栄であり、これからの研究を進めていく上での大きな自信となりました。英語での口頭発表は初めてのことで、最初は不安ばかりでした。しかし、滞在していた研究室の学生の方と練習に練習を重ね、少しでも内容を理解して頂こうと努力しました。発表では非常に緊張しましたが、研究成果を十分に伝えることができたようで質問も多数あり、外国の研究者にも私たちの研究に興味を持って頂けたました。発表の成果としてこのような賞を頂いたことを誇りとし、大学院での残りの研究生活に活かしていきたいと思います。最後になりましたが、ご指導頂いた末信一朗准教授ならびに成功大学張憲彰教授、そして助成をしていただいた財団法人交流協会に深く感謝いたします。