平成20年度(第41回)照明学会全国大会において、「青色防犯照明下の顔の認識」のショートプレゼンテーション付きポスター発表を行った結果、工学研究科の高橋さえりさんが優秀ポスター発表者賞を受賞しました。この賞は、照明学会全国大会委員会が主催するポスター発表において、特に発表が優れたものと判断された若手の個人に対して与えられるものです。
スコットランドで街路灯を高圧ナトリウムランプから青色の高輝度放電ランプに変えたところ犯罪数が減少しました。日本でも同様の試みで犯罪数の減少が報告されましたが、青色照明の防犯効果の機構については、心理的な仕組みが報道されているだけで、視作業に関する青色照明の優位性は示唆されていません。
今回、青色照明の防犯効果の機構について調べるために、防犯上重要な人の顔の認識を青色照明下と白色照明下とで比較しました。実験は周囲から漏れ光のない小径で行いました。電柱の照明器具1灯に青色蛍光ランプと白色蛍光ランプとを交互に取り付けました。条件統制の必要上、予め撮影した顔写真を評価対象とし、被験者から20m隔てた地上1.5mの位置に提示しました。28名の被験者のそれぞれは、提示された顔が認識できるまで一定速度でゆっくりと近づき、顔を正しく認識できた時の距離を測定しました。
実験の結果、青色照明下での顔の認識距離は、白色照明下のそれより短いことがわかり、夜間街路における顔の認識について青色照明の利点は見出せませんでした。
今後は、視作業別に青色照明と白色照明のメリット?デメリットを明らかにさせたガイドラインを作成し、用途に応じて使い分けることが必要だと考えます。
このような素晴らしい賞をいただけたのは、協力し、支えてくださった皆様のおかげです。今夏は3つの学会で研究内容を発表しましたが、最初の発表がこの照明学会全国大会でした。初の学会参加、発表だったので非常に緊張しましたがいいスタートを切ることができました。他大学の学生や企業の方の発表内容は非常によい刺激になり、また今後の研究の参考にもなりました。”照明”と一言でいっても研究は多岐にわたることが分かり、さらに興味がわきよい経験になりました。受賞した研究結果はまだ小さなステップですが、これからの研究の大きな励みになると思います。今後も気持ちを新たにして、全力で励んでいきたいと思います。
大学院工学研究科建築建設工学専攻 高橋さえり