がん患者支える
遠隔看護めざし
- 佐藤 大介
- SATO Daisuke
- 医学部看護学科 教授(がん看護学/災害看護学)
Profile
宮城県生まれ。2002年、宮城大学看護学部卒業。同年、宮城県立がんセンターに看護師として勤務。2008年、山形大学大学院医学系研究科看護学専攻修了。2016年、東北大学大学院医学系研究科保健学専攻修了。2018年、公立小松大学保健医療学部准教授。2022年より現職。
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情報通信を活用、病状を共有
がんの化学療法では、患者さんが自宅で日常生活を送ることがあります。病状チェックや心身ケアが必要なのですが、入院中と違い十分な対応ができないおそれがあります。私はそこをカバーしようと、情報通信技術(ICT)さらには人工知能(AI)を利用した、遠隔看護支援システムの開発?研究に取り組んでいます。
このシステムでは、在宅の患者さんに通信機能付きの測定器を貸し出して、脈拍、体温、血中酸素などを日々測り、タブレット端末に体調を問答形式で入力してもらいます。その情報をリアルタイムに看護師と医師が共有。看護師は、週に一回はテレビ電話などで、生活上の相談を受けたり、避けられない抗がん剤の副作用を軽減する生活習慣をアドバイスしたりします。
臨床に参加した患者さんからは「いつも見守られている感じで安心感があった」「何かあったとき、病院に行く前に相談できてよかった」と、良い評価を受けています。医療側も、遠方の患者さんの状況が日常的にモニタリングできるのは大きなメリット。AIについては、遠隔看護中の患者さんの共有情報を基に医療介入するべきかどうか、タイミングの良い判断に活用できないか、研究しています。
原点は東日本大震災
2011年、東日本大震災が発災した当時、私は母校宮城大学の助教をしており、地震の2週間後に宮城県気仙沼市に派遣されました。発災当初から任務にあたっていた現地の医療スタッフは、自らも被災し、家族、親戚の安否もわからないまま休みなく働いていました。想像を絶するストレス。「何かしたい、助けになりたい」と思いながら何もできない、自身の力の無さを痛感しました。今の研究に進んだ私の背中を押し続けてくれる原風景です。
がんをはじめ治療が必要な患者は、発災時に病院で受診できない状況も予測され、本システムがあれば遠隔地にいる医療者が患者の状態を把握することが可能となります。本年早々には石川県能登地方で大きな地震が起こり、私も発災後すぐに珠洲市で救護活動に携わりましたが、医療人員や情報の不足などを痛感しました。この研究を進めることで、未知の災害においても多くの患者さんを守れるようになるのではないでしょうか。
大相撲の大ファンで、公式グッズの湯飲みをいくつも集めています。