須長 寛

臨床も、研究も、
基礎学問を深く理解してこそ
最善の方法にたどりつける。

  • すなが耳鼻咽喉科
    医師
  • 須長 寛さん
  • SUNAGA Hiroshi
  • 1995年度 福井医科大学(現 福井大学)医学部医学科卒業
    2001年度 福井医科大学(現 福井大学)大学院医学系研究科博士課程修了

大学時代の“厳しい学び”が困難を乗り越える力になっている

 「1日でも早く、専門的な医療知識を学びたい」。そう考えている医学生が多いのではないでしょうか。私も医学部に入学したばかりの頃は、そう思っていました。生理学や生化学、物理学といった基礎的な科目よりも、臨床で直接役立つ専門知識を早く学びたいと。ですが、臨床実習が始まると、壁にぶつかる度に基礎科目の重要性に気づかされることになります。最前線の医療に関わる臨床的な技術も、基礎的な学問を複合的に理解した上にしか成り立ちません。例えば、抗がん剤治療にしても、「なぜ、その抗がん剤が効くのか」を分子生物学的に理解してこそ最善の治療ができるのです。低学年の時、基礎科目をしっかり学んでおけば、臨床実習や研究で必ず役立ちますし、医療現場でより知見を深められるはずです。
 私は祖父が耳鼻咽喉科の開業医をしていた影響で、自然と同じ道を選びました。福井大学医学部の前身である福井医科大学の10期生として入学し、充実した毎日を送りました。当時はまだ比較的新しい医学部でしたが、基礎から専門へステップアップできるカリキュラムが確立していましたし、大学で顔見知りの先生方が大学病院での臨床実習でも担当してくださるのは心強かったですね。厳しい先生もいらっしゃいましたが、そのおかげで困難を乗り越える力が身に付けられたと感じています。大学院に進んでからは頭頸部がんの発症メカニズムを研究していました。当時からメンテナンスの行き届いた共有の実験設備があり、恵まれた環境で研究に没頭できたと思います。

外来診療の醍醐味を感じながら患者さんの信頼に応えていく

 現在、開業して4年が経ちました。薬の処方を変えるなど診療を工夫することで病状を驚くほど改善できることがあり、患者さんの喜ぶ顔を見られた時はうれしいですね。医師として最善の治療を見極められるかどうかは、やはり基礎学問を深く理解していることが大事ですし、根本的な原因を突き止めるには患者さんの話を深く聞く力も求められます。医学生のみなさんには、ぜひ学生のうちからコミュニケーション力を磨いてほしいです。私自身が学生時代にやっておけば良かったなと思うのは、医師とは無関係な異業種でのアルバイトです。接客業などでさまざまな人と触れ合う経験をしておけば、患者さんの価値観や生活背景にまで配慮した診療に役立つのではないかと思いますから。私も開業医としてはまだスタートしたばかりなので、さらに知識を磨いて地域のみなさんの信頼に応えていきたいです。

My memories

  • 大学院で頭頸部がんの研究をしていた頃